試作板金加工 材質技術情報
金属の一般的性質
金属材料の一般的性質を分類すると、物理的性質、機械的性質および化学的性質になる。金属材料を総括して理解するには、まずこれらの諸性質を知る必要がある。
物理的性質
金属の物理的性質とは、外力によって変化することがない金属の特性をいう。
その代表的な性質について以下に述べる。
比重
比較する物質と同体積の水(4℃)の重さとの比。他金属と重さ、軽さを比較するのに用いられる。軽金属、重金属の区分は、比重3以下を前者、5以上を後者としている。 同じ金属でも、その純度、加工法の違いによって比重は多少異なる。例えば溶融鉄は688、鋳造鉄は786、錬鉄が770である。
比熱
比熱とは、物質lgの温度を1℃ 上げるのに必要な熱量をカロリーca1/g℃ で表した値をいう。 比熱の大きいものほどあたたまりにくくさめにくい。反対に比熱の小さいものほどあたたまりやすくさめやすいことになる。
溶融点
金属は一般に常温で固体であるが、加熱すれば膨張-溶融-液状の状態をたどる。 この履終の波状となる温度を溶融、点または融点ともいう。
膨張係数
金属は温度上昇によって膨張し、逆に下降すれば収縮する。温度が1℃ 上昇したときの単位休積(1c㎡)の増加値を休膨張係数という。 長さの増加する割合を線膨張係数といい、この約3倍が休膨張係数となる。一般に融点の低い金属ほど膨張係数は大きい。
熱伝導率および電気抵抗
断面積1c㎡、長さ1cmの物質の両端の温度差が1℃ のとき、その物質の中を1秒間に流れる熱量を熱伝導率という。
熱伝導率の大きいものは熱を伝えやすく、熱を伝えにくいものは熱伝導は小さくなる。圧延したものは、鋳造したものより熱伝導率がよい。
電気抵抗の小さいのは電気の良導体で、高純度の銅、アルミニウムが挙げられる。
絶縁体には、ゴム、合成樹脂、繊維類があり、中間的存在に黒鉛、クルマニウムなどがある。総じて熱性の大きいものは導電性も大きい。
機械的性質
金属材料を使用するときに最も重視されるのがこの機械的性質である。外力が金属材料に働いた場合の抵抗する強さや硬さの性質を指すものである。
強さ
引張り、圧縮、せん断その他の外力に抵抗する力で、金属材料の代表的な表示は引張り強さである。 圧縮強さは、材料を押し縮めようとする力に抵抗する強さ。せん断強さは材料がずれによって切れてしまう最大荷重に抵抗する強さを示す。延性、じん性
延性とは材料を線や棒に細長く引き延すことができる性質である。これは引張り試験のとき、伸びと断面の結小程度によって知ることができる。 材料に急激なカ――打撃――を加えたときにこれに抵抗する強さがじん性である。従って強さと延性が大きいほどじん性は大となる。強さがあっても延性のないときは、材料としてはもろく衝撃にも弱い。 これがぜい性である。硬さ
硬さとは外圧に抵抗する力で、試験方法も多種多様にある。 ブリネル硬さ、ロックウェル硬さ、ショアー硬さ、ビッカース硬さが代表的なものとして挙げられ、それぞれの硬度番号は、換算式によって相互に比較することができる。化学的性質
化学的性質とは耐食性を指し、大気中や海水および酸、アルカリなどの化学薬品に対する強さの度合をいう。一般に合金は耐食性がよい。
合金
合金とは金属元素が1種またはそれ以上の金属や非金属を加合させて作った材料で、金属としての特′性をもったものをいう。合金は主要な成分の数によって、 2種からのものを二元合金、 3種からのものを三元合金という。
合金の一般的性質
成分となっている単一金属より合金となったときには、強さをはじめ性質が変化するものである。
一般的性質 | |
---|---|
強さ | 引張り強さは増加する、伸びは減少する。 |
硬さ | 一般に硬さが増す、しかし熱処理、加工度で変化する。 |
可鋳性 | 加熱したとき、流動性が増して鋳物にすることができる性質。一般に増加する。 |
可鍛性 | 圧延、引抜きなどによって変形する性質。減少するか、 まったくなくなる。 |
溶融点 | 低くなる。従って湯流れがよく可鋳性がよくなることになる。 |
導電性 | 一般に減少する。 |
耐食性 | 化学的な腐食作用に対する抵抗力は一般に増加する。 |
鉄と鋼
鉄と鋼とは他の金属より強さ、硬さ、延性などがすぐれており、さらに熱処理加工によって組織の変化を生じさせ、諸性質を調整して利用範囲を拡大することができる。
鉄鋼の種類
鉄は元素の鉄(Fe)と炭素(C)の合金で、Cの他にけい素(Si)、マンガン(Mn)、りん(Pb)、F声し黄(S)などがある。なんといってもCの含有量が鋼の性質を絶対的に支配している。
炭素鋼に炭素以外の元素を加えたものが合金全岡または特殊鋼とよばれるものである。炭素鋼では求められない特殊な性質が特徴となる。
鉄、鋼の特性
特性 | |
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純鉄 | 1. 展延性が大きい(軟らかい) 2. 強度が低い 3. 製造費が高くつく |
軟鋼 | 1. 焼入れ硬化がない 2. 塑性加工、切削加工、溶接などの加工性がよい 3. 強さ、延性が適度である |
硬鋼 | 1. 熱処理効果がある (焼入れ、焼もどしにより強さ、硬さを変化できる) 2. 溶接の加工性は悪い |
炭素工具鋼 | 1. 熱処理により硬さが増加する 2. 強くて、伸び、ねばりのある性質(じん性)が低い |
鋳鉄 | 1. 融点が低いので鋳造加工性がよい 2. 折れやすく、くだけやすい性質(ぜい性)があり鍛練できない |
板金材料
板金材料は、当然のことながら板金加工に適応できるものでなければならない。その加工とは主につぎに示す種類のものである。
- せん断加工
- 打抜き加工
- 曲げ加工
- 溶接加工
- 容断加工
- 表面処理加工
- 組立て加工
など。
板金加工による製品は、大は航空機、自動車、電車などの交通機関から、製缶、建築関係さらに家庭用品の洗濯機、冷蔵庫、けい光灯その他事務機器があり、小は玩具にいたるまで実に広範囲に及んでいる。
板金材料の種類
板金加工種類の多様化と、広範囲に及ぶ製品利用から板金材料の種類は非常に移く、つぎのように分類される。
材料記合
前記材料の記号は、日本工業規格(JIS)で規定されている。伸銅品やアルミニウム展伸材などの特殊なものを除けば、その原則はつぎのようになる。
- 最初の部分は、材質を表す。
- つぎの部分は、規格名または製品名を表す。
- 最後の部分は、種類を表す。
材質を表す記号(1の部分)
材質は英語、ローマ字または元素記号を用いて表している。その代表的な例は表8のとおりである。
例外もあってSが鋼でない場合もある。これは冷間圧延けい素鋼板(シリコンマンガン金属クロムなどの合金)で、S□ □ (Sはシリコン、□□は数字)として表される。
規格名・製品名を表す記号(2の部分)
主として最低引張り強さ、非鉄金属では種別番号を表している。
種類・強さを表す記号(3の部分)
主として最低引張り強さ、非鉄金属では種別番号を表している。例えば下記のとおりである。
- 1種、2種などの種類・・・SNC2(ニッケルクロム鋼の2種)
- A種、B種などの種類・・・SWPB(ピアノ線 B種)
末尾の部分
第3の部分にさらに加え、末尾に形状、製法、質・熱処理を表す記号もある。